Trend-Blue

  ~懲りない傾向~

でも実は49作目

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スーパー戦隊シリーズなんて言葉は後から造られたもので、今で言う「秘密戦隊ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」は当初、その括りにすら入れられなかったのですが、紆余曲折しながらシリーズ一本化したおかげで本年(4月5日)が50周年。あきれるほどに凄いものです。「ウルトラ」「ライダー」も持続はしていますが中断休止の時期もあった。スーパー戦隊は半世紀にわたって絶え間なく繰り出されている、ただ一つの特撮ヒーロー番組なのです。

そのただ一つの系譜を引き継ぐ50番目の戦隊が、本日放送開始となる「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」。50年目で50番目ですが実は番組として見ると49作目。ゴレンジャーが2年に及ぶ長丁場だったからです。ところが「ルパンレンジャーvsパトレンジャー」という二大戦隊を途中にちりばめていることで、うまいこと50番目を襲名でき、2026年の新戦隊には「50作目」の冠も与えられるおいしい年まわりになっています。しかし子供の憧れ番組にそういう商魂ちらつかせちゃいかんわ。

出すぎた杭は打たれない・・・はずなんだけど

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「出すぎた杭は打たれない」と言ったのは松下幸之助さんでした。中途半端で批判を恐れていては良い結果は得られない、信念をもって事に当たれという教えだったのですが、世の中そんなに甘くない。それをやり過ぎと解釈され邪魔だと疎まれれば、場の空気やらコスト論やらで潰されてしまうのが社会の構造になってしまいました。「仮面ライダークウガ」と「仮面ライダー響鬼」は、どちらも批判が無かったわけではありませんが2000年以降の仮面ライダーとして秀作でした。

しかしどちらも上記のような楽屋裏の騒動の末に、前者では警戒視線が生まれ、後者で遂に路線変更とプロデューサー更迭の顛末となりました。25年前のクウガは「仮面ライダーでなくてはならなかった」、20年前の響鬼は「仮面ライダーから脱したかった」という宿縁を背負い、それぞれが平成時代の新機軸を産み落としたけれど、内情として伝わるものには後味の悪さが残ります。そしてこの二作のようなライダーを超えてくるものもない。本日は両者の第一話の日です。

ワンツースリーっ

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12月3日もそうかもしれないような気もするんですが、1月23日こそが「ワンツースリーの日」として記念日制定されています。長野県佐久市に所在する一般社団法人日本記念日協会によるもので、同会がまだ任意団体だった1987年に定められています。その心は「自らの人生において跳躍する気持ちになろう」説と、「何事も一歩、二歩、三歩と踏みしめていこう」説とがあるようです。まあどちらももっともなお話です。明日に微笑みあるだけの人生はなかなか悪くない。

兄ちゃんは今年還暦な兄弟戦士

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1985年はバイクに乗って戦うあのヒーロー不在の頃でしたが、企画面で原作クレジットとしてかかわった石ノ森章太郎さんが「兄弟拳バイクロッサー」を世に送り出しています。キャラクターや小道具大道具を見れば、これはもう玩具企画が先行していることが分かりますけど、石ノ森ネームバリューは棄て置けないものだったのでしょう。主人公の一人、兄・水野拳は1965年の元日生まれで、本年還暦を迎えています。弟・水野銀次郎が乗るバイクを担いで砲撃する力持ちです。

放送局の違いからなのか、この二人は類型的にメタルヒーローと思われるのだけれど、そのシリーズには取り込まれていません。前年前作の「星雲仮面マシンマン」も同様でした。母艦があり戦闘車両と戦闘バイクがあり必殺武器のバイクを担いでしまうギミックなど、そうそう悪くもないアイデアだったと評価できるのですが、町内ヒーローというスケール感や悪役の扱いで、さほど人気は高まらなかった。ブルマー履いてタイツのような脚部が、僕は嫌いでした。40年前の本日登場。

マスカーワールド(仮面の世界ではないよ)

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大雑把な部分は自分でやりますが、ヘッドライトやテールランプのような微細で複雑な形状のところは、もはや目がついて行かないし指がごつすぎて太刀打ちできないのです。

年末に作業して休みの間に完成させるつもりでしたが無理だなこりゃ。という窮地はやはり霙が救ってくれます。あとは期間にこだわらずのんびりやります。

それにしても1/43スケールで流用させてほしいパーツというのはまず無いですね。そんなサイズの模型自体が無いんだから。仕方なくタミヤの1/35で加工できそうなものを、これまた直感ヤマ感で選んできます。98%は使わないままジャンク行きです。最大の問題は、頭の中のイメージを再現できるだけの器用さが無いってことなんです。

20年目の斗折蛇行

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唐代の文学者であり高級官僚であった柳宗元(りゅう そうげん)が綴った「斗折蛇行」という言葉は、北斗七星のような折れ曲がる星座の配置と、蛇の進むが如くうねりを、道や川の続く様として表しています。この言葉と関わるわけではありませんが、彼もまた優秀な役人であったのに、上層部の政変で左遷の憂き目にあった男でした。

人は大なり小なり紆余曲折な暮らしを続けていますが、そのことはさておきうちのスズキエスクードTD61Wは、乗っている自分が言うのもなんですが、これほどこの言葉が似合うエスクードを他に見ない道のりを走り続けています。海外に持ち出された古い個体には、おそらくうちのエスクード並みの積算走行距離を刻んでいる物があるかもしれませんが、少なくとも日本という国内において、あと約50000キロでオドメータがリセットされるような(リセットされるかどうかスズキもわからないと言っているという)個体は無いと思います。

この個体は90000キロ直前で下取りに出された1台でしたが、二人目のユーザーとの出逢いは20年前のことです。これまた自分で言うのかの話ですが「厄介な奴に見つかっちゃったよね」の始まりが、2005年の夏のこと。そこから文字通り「とせつ・だこう」の日々が繰り広げられています。走ったし壊したし壊れたしで、見てくれ以上に満身創痍です。「斗折蛇行」と言いながらも、走らせる意志と走る力が微塵もぶれていないことだけ、この個体の見どころです。

まだまだ行先は各地に折れ曲がって所在し、そこへたどり着く道のりも未踏でうねうねと曲がっているのですが、今年も淡々と走り続けるのみです。

 

遅くなりましたが報告しますと、12月30日夜、急な鳩尾の痛みと嘔吐で倒れまして、県立総合病院に電話をしたら救急外来が混雑しているけれど、来るだけ来てみなさいと。雫さんに運転してもらって駆け込んでみると電話のときのピークは過ぎたのかもともと混雑していなかったのか、すんなり診察に回されました。

ここら辺の経過はほとんど覚えていませんが、あとから情報を加えると、触診とか心電図とかCTスキャンでわかったのが胆石。しかも胆道と胆嚢の接点に確認されステンドを入れて胆道確保の必要アリと。しかし場所が悪く胆嚢を傷つける恐れが出ていてそれやっちゃうと最悪重篤化と脅されたようですが、朦朧としていたのでそのまま内視鏡処置へ。

この頃すでに意識はありません。内視鏡は口から入れられたようで(マウスピース咥えていた)すがあれが体内を蛇行した感覚が無い。←干支的な表現できたよ

この一連のフェイズ進行の最中、胆石は発見場所から砕けて落ちてしまったらしく、ステンド処置も必要なく内視鏡自体も短時間で抜き取られ。朦朧としたまま病室までストレッチャー搬送され点滴の管につながれておりました。

年越しのさ中にお騒がせして申し訳ありません。膵臓も弱ってるってことで診察は続いております。

Gott nytt år 2025

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マイティジャックを取り戻せ! 完結編ノ捌にして了

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横須賀地方隊所属の掃海隊が操る掃海艇「えのしま」型掃海艇、「えのしま」と「ちちじま」による「熱い氷」の撤去作業が続く中、頭上で耳障りな噴射と排気音を響かせる黒い飛行物体は、突如轟音と共に前方に向けて砲雷撃を開始した。
「何事か!」
「えのしま」の艦橋では情報収集に追われた隊員たちが肝を冷やしていた。砲撃の電磁衝撃波で通信状態もブラックアウトする。

この電磁障害を受けた民間の報道ヘリコプターも現場から離脱せざるを得なくなった。
横須賀側、富津側の地上に散らばっていた報道中継車もまた、電波障害のあおりを受けてお手上げとなっていたが、そこかしこで携帯電話のカメラ機能を使った市民が勝手にインターネット上に動画を配信している。だがそれらもまた通信不能状態に陥る。
既に羽田空港での離着陸に対して、管制側では航空機との交信がブラックアウトしたことで支障を来していた。謎の空中戦艦が放つビームの余波は想像以上に大きく、湾岸各所でも自動車のエンジンがストールしナビケーションも不能となっている。
「上空の飛行物体は東方15キロ地点に飛行していた物体を砲撃した模様。この二つ目の飛行物体は落下地点で巨大な水柱も確認されており、爆発墜落したと思われます」
「『ちちじま』からも同様の発光信号あり。館山からは支援機が向かっているとのことでしたが安否不明」
「何が始まったんだいったい」
「ひょっとして・・・『МJ事案』では?」
東京湾の混乱は次第に、様々な形で全国に拡大していった。

「会長宛にお電話です。中野のオフィスから転送されています」
エマがレシーバーを持ってきた。矢吹はそれを受け取り自席のジャックにケーブルを差し込み、レシーバーを着装する。
『さすが、マイティジャックの専用回線は電磁波嵐の中でも問題ないようですね』
男の声に聞き覚えは無かった。
「どちら様かな」
『初めまして、矢吹省吾と申します。大五の倅です』
「・・・大五の。そうか、君は父親の跡を継いだというわけだね」
矢吹は表情を変えることなく、傍らのスイッチを入れた。
「選択の自由は君自身のものだが、私のところにも顔を出してから決めてもらいたかったな」
『何をおっしゃいます。あなたのところじゃもう、孫と言えども僕の居場所なんか無いじゃないですか。父もそうでした。ただ、父の場合はもともとあなたと相いれなかったんでしょうけど』
対話に出てきた矢吹大五とは、矢吹郷之助の四男だ。矢吹には正妻、後添え、妾との関係も合わせて8人の息子、娘たちがいた。筆頭の長女と長男、次男は戦時中の空襲で失い、三男は戦後の混乱期に病死している。現在は一女二男の3人が存命だが、五男と、末の六男に至っては矢吹が60代の末から70代に入っての隠し子だった。大五は矢吹にとって後継者の期待を寄せられていたが、高度経済成長期に学生運動から過激派に加担し行方不明となったままだった。後に矢吹の諜報筋から消息はつきとめられ、よりによって矢吹の忌むべき仇敵のもとに身を寄せていたことが判明した。
矢吹が旧海軍時代の諜報部員であったころ、同様の任務を遂行する旧ドイツ軍将校との交流があった。敗戦によって互いの連絡は途絶えたが、このドイツ将校はベルリンを脱出し地下に潜伏した。連合軍側が世界秩序を回復させていく中で、矢吹がGHQの配下で日本経済の立て直しを進めたこととは真逆に、再び第三帝国の覇権を取り戻そうと暗躍に走ったのがその将校だった。彼はやがて世界の覇権をも手中に収めるべく地下組織を巨大化させていく。
科学時代の悪、と呼ばれたQの橋頭堡だ。
矢吹は比較的早い段階でこれを察知し、対抗手段を立案し実行してきた。
マイティジャックである。
しかし矢吹の誤算、彼を襲った運命の翻弄は、四男が思想的に反発し、社会的地位を身につけ力を振るう父親の行動を私欲にとらわれた傲慢だと罵り家を飛び出していったことだった。
Qにとっては矢吹をあざ笑う出来事だったが、Qに身を投じた四男・大五の思想はともかく、実力は伴わず、組織内で粛清されたとの情報を得たのが最後の足取りだった。
その四男に息子が、自分自身にとっては孫が存在したことは、矢吹にも驚きの事実だった。
『矢吹会長。僕は反社会思想に踊らされただけの父とは違います。無論平和主義の思想に正義をこじつけたあなたとも違う。僕はビジネスモデルを提案するために来ました。あなたのご自慢の万能戦艦は、たかが模造品でも退けられる。同時に世界の均衡もこれだけで突き崩せる。そしてこのビジネスチャンスは何も空中戦艦に留まらない。これを飛ばす技術も動力核融合も大きな市場を切り拓くのです。あなたをこのフネに招待したいけれど、どうせあなたは僕など認めないでしょうけどね』
男の声は愉快そうに聞こえた。
矢吹はじっと瞼を閉じたまま聞き続けていたが、ゆっくりと口を開いた。
「矢吹省吾君、なんとも稚拙な商魂と口上だね。だがその若さだけは羨ましく思うよ。人はそのような過ちを糧にして成長するものだ。そこでひとつ言っておこう。君は父親の大五とともに矢吹の掟に背いている。その大罪を私は許さぬ」
『ほう、一度は祖国を滅ぼしかけた愚者の一員であった罪を逃れ、進駐軍の手先となってのし上がったような家系にどれほどの大義があるというんです? あなたは国を再生したかもしれないが、いつまでも玉座に居座り続けて私欲に酔いしれている。《矢吹郷之助と11人の勇者》と言うがそのお立場だって、Qとたいして変わらない。所詮はネズミの集団ですよ』
「言いたいことはそれだけかね?」
矢吹は瞼を開いた。怒りの形相が浮かんでいることに、エマは動揺した。
「その通りだ。私は私の贖罪のために生きながらえている。それが私欲にまみれた姿に見えるかもしれぬ。歯を食いしばらねば耐えては行けぬ地獄の業火を、人に知ってもらいたいとは思わぬ。そのような私の傲慢さを、しかし私のもとに集う勇者たちは、君には理解できぬ立ち位置で信頼してくれているのだ。その勇者を私は既に二人も失っている。彼らの弔いは君たちを根絶やしにするまで終わらぬ。私のことはともかく彼ら勇者たちの侮辱は容認しかねる」
矢吹は拳を握りしめて立ち上がった。
「聞いてのとおりだ。遺恨を残さぬために君たちにもこの対話を聞かせた。そこにいる愚かな邪悪の亡者を殲滅せよ!」

「ちちじま」の左舷後方から何かが近づいてきた。
混乱の渦中には似つかわしくない穏やかな東京湾の海面が、まるで怒りだし荒波を引き起こしているように、「ちちじま」の乗員は感じ取った。
「『えのしま』から発光信号。何かが追ってくる。危険回避のため双方間隔を開けて距離をとれ」
「何がとはなんだ?」
「なんだかわからん・・・というようなことを言ってます」
「なんだかわからん、か。そんなものだろうよ。取り舵いっぱい! 全速でこの海域から離れる!」
「ちちじま」「えのしま」がそれぞれ回頭行動を始めた。そこへ突如、海面が盛り上がり、巨大なしぶきをあげて人工の構造物が姿を現す。激しくかき分けられた波が掃海艇の舷側に押し寄せ、二隻とも勢いに翻弄される。
「潜水艦だ!」
「いや違うぞ、あんな艦橋の潜水艦など存在しない」
鋭利な艦首と、艦船にはあり得ない翼を浮上させ、それは波を蹴立てて姿を現し宙に浮かび上がる。船舶とは思えない艦尾のノズルから何かの発光噴射が解き放たれ、海上を飛翔する。掃海艇の乗組員は轟音に首をすくめ耳を塞いだ。
「爆撃機だ!」
「馬鹿言うな。潜水艦が空飛んで爆撃機になるもんか」
「そうか! あれが本当のМJ!」

空中を急速度で上昇するMJ2の目前に、ブラックジャックの艦尾が迫る。
これが当の奇襲だった。アストランダ―ロケットを囮にして空中爆発を装い、海面激突の直前に艦首格納大型ミサイル「ビッグM」を発射して海上で誘爆したように見せかける。
墜落・爆散したと思わせながら海中に姿を消し、あえて対消滅エンジンをアイドリングさせ補助スラスターの水流ジェットのみで航行しながら海底すれすれの深度で東京湾に侵入したMJ2は、掃海艇のソナーをも波の乱反射で掻い潜り、一度掃海艇をやり過ごして湾の奥で回頭しながら頃合いを見計らっていた。湾内での潜水艦運用は深度不足から困難と言われているが、МJ号専用にいくつかの航路が海底を掘り下げ整備されている。
「制御カナード両舷展開。隊長、ほんとにぶつけちゃっていいんですね!」
源田が念のために確認するが、当は矢吹と矢吹の孫とやらの対話を聞かされてからすこぶる機嫌を悪くしていた。
源田は答えを得られず苦虫を噛み潰したような表情になり、操舵桿を引き起こす。対消滅エンジンが再びMJ2に推力を与える。
「ぶつけますっ、全員ショックに対応っ」
「トール・ハンマー、shoot again!」
「こんな攻撃でこっちがこわれませんよねーっ」
源田はブリッジ後方の太陽光集積パネルブロックが水平になるまでMJ2に俯角を与え、ブラックジャックの艦底部にやんわりと接触させ、そして推力を上げてぶつけていく。艦首の放電障壁も物理圧力を仕掛け光を増す。衝撃と振動が混ざり合った厭な大音響がブリッジを襲い、けたたましく警報が鳴り響いた。
ブラックジャックもこの不意打ちには驚愕したとみられ、MJ2を引きはがそうと推力をかけるが押し付け押し出す力はMJ2が勝っていた。衝突したブロックの装甲版を破損させながらもMJ2は同等の質量を持つ敵艦を浦賀水道上空からぐいぐいと押し出していく。
「こりゃあ・・・副長でもやらん荒業だ」
「博士ぇ、誰もやりませんよこんな奇襲!」
「六さん、エンジン大丈夫かい」
「一応・・・正常に動いてます」
ここもタイミングの計り処と判断した当は、乗員たちの動揺をよそに号令する。
「ゲン、本艦の俯角70度で敵艦を『背負い投げ』だ。その後速やかに水平に戻し敵艦底部に一斉射撃!」
「マジでいいんですねっ 背負い投げ、いきますっ」
「ミサイル、主砲スタンバイしてますっ」
MJ2は艦底部の補助スラスターを順次全開にした直後、今度は艦上方のスラスターで逆噴射させ、ブラックジャックの巨体を弾き飛ばした。ブラックジャックは艦尾を上に向けたまま突き放される。
「今だ、全砲門斉射!」
MJ2はまだわずかな俯角に留まっていたが寺川はかまわずボタンを押しまくり、レバーの引き金を引く。MJ2の各発射管からミサイルが放たれ主砲が咆哮する。
数百mの至近距離で着弾と爆発が生じ、敵艦は更に吹き飛ばされ艦底部が破壊された。
『マイティジャックの諸兄! 矢吹の11匹のネズミども! 背後から来るとは卑劣な奴らだ』
先の矢吹との対話利相手から音声通信が入った。
「うるさい黙れ! 誰だか知らんがこっちは取り込み中だ!」
当の激怒した口調があまりにも普段と異なり、ブリッジの面々は振り返ることもできずに聞き入るしかなかった。
『こちらもただでは墜ちない。この距離ならもう一度間合いを詰めることは可能だ、地獄へ引きずり込んでやる』
「ゲンっ、急速上昇。距離を開けろ!」
『残念だな当さん! もう遅い』
勝ち誇ったような錯乱したような叫びが届いたとき、迫り来るブラックジャックの艦体を一筋の光が貫いた。
衛星軌道から発射された、あの超高速粒子ビームだ。しかもMJ号が小笠原沖で狙われたときよりも明らかに出力の上がった一撃だった。艦体周囲の水蒸気が沸騰しみるみるうちに「熱い氷」がブラックジャックの艦中央部を覆い拡大していく。
「見事だ副長。パッティングの腕は超一流だな」
当は意外にも興奮していた。だがすぐに後味の悪い思いに駆られていく。
ブラックジャックは見境なくミサイルを撃ち出すがMJ2にダメージをもたらすことはできず、急激な姿勢バランス消失によって海面に落下していった。皮肉にも「熱い氷」が艦の誘爆を抑え込んだ。

MJ2は何発かの着弾で艦体を破損させたが水平飛行状態を取り戻した。源田の機転で衝突直前にMT号内への格納角度まで倒されていた両舷尾翼は定位置に戻され、艦首付近で揚力維持と姿勢制御を行っていたカナード翼も格納されている。
警報はまだいくつかがアラート発令している。それでも飛行には問題が無いようだ。目視は出来なかったものの、海上ではブラックジャックが墜落したポイントで爆発が観測されていた。わずかに放射線測定器がガンマ線と中性子線反応を示す。
その値は計器上では程度問題と読み取れた。Qの悪意の中の良心と言うべきか、件の企業が開発した核融合炉の安全性の高さか。
矢吹会長からの特殊通信が届く。マイティジャック本部とブリッジではクリアに対話できるが、スクランブル暗号化されたデジタル信号によって第三者には傍受できない。
『諸君、危険な任務の遂行ご苦労だった。つまらぬ理屈の争いに巻き込んで済まない』
「会長、一条です。みんな疲れきってへとへとで、ちょっとお答えできないみたいです」
『無理もなかろう。こちらはこれから政府とのやり取りやら国連への報告やらでぼろぼろになるよ。勇猛果敢なマイティジャックに感謝すると同時に指示を伝える。第二ドックに帰還し破損個所の修理ののち、天田、桂両名を迎えにもう一度宇宙へ飛んでもらいたい』
「伝えます。会長はマスコミに気を付けてくださいね」
『ありがとう一条君。では後日、ガリレーで美味いコーヒーを』
ヘッドセットを外したマリは大きく深呼吸した。周囲を見るとまだ放心状態の者もいればシートをリクライニングさせていびきをかき始めた者もいる。源田はまだ操舵に夢中で航空管制域からの離脱に専念している。もたもたしていると空自の戦闘機が上がってくる。面倒なことはもうこりごりだと源田は感じていた。
「あの・・・隊長」
「・・・何も聞かんでくれ、マリちゃん。俺は任務のために大罪を背負い込んだ」
「・・・」
「隊長。心理戦に負けてはいかん。メンタルをやられるのはQの思うつぼだ」
「そうだな、先生。だが・・・まあやっちまったことは取り返せん。自分からは逃げられんね」
以前と違って煙草の吸えなくなったブリッジは今の当には苦痛だった。
「そういえば隊長。『ビッグM』の爆発が一番やばかったですよ」
いびきをかいていた寺川が目を覚まして呟いた。
「うん。あの至近距離で使ったからな。あれはまだ切り札にしてQには悟られない方がいいと思ってはいたんだが・・・」
めぐみからも特殊通信が来た。
『衛星は完全に制御下に置かれました。さっきの最大出力で粒子砲は焼き付いてしまいましたが、追加前の指示だった軌道上の諸衛星へのジャミングはうまく行ったと思います。でも、あの状況の中で衛星奪還後に粒子ビームで敵を狙うなんて作戦、とても思いつきませんでした』
「ご苦労だった桂君、副長も絶妙のタイミングだった」
『隊長、早いとこ迎えを頼んますよ。タバコ吸いてえ』
「今までとは違う。宇宙往還する艦になって、ここじゃ俺も喫煙できんのだ」
『そんな後生なっ。おいプロフェッサー、お前天才なんだろ? 喫煙室と空気清浄循環システムくらいつけろよ!』
「Please quit smoking for your health!」
それを言われて当も苦笑いしながら頭をかく。ブリッジには久々に快活な笑い声が上がっていた。
「ゲン、無茶な操艦をさせて悪かったな。現状で潜水できるか?」
「後ろの装甲版がいくらか破損してるようですが、ジェルパッキンで応急処置します。潜航深度は浅めにするしかありません。ドックの深さまで潜るとたぶん浸水」
「仕方が無いだろう。大利根船長に連絡してもう一度拾ってもらったらどうだろう」
村上が提案する。続いて服部からの報告がなされた。
「左舷主エンジンが止まっちまってます。安全装置の作動のようです。片肺での航行には支障ありません」
「Please wait a moment、復旧プログラムをロードします」
ブリッジは次第に騒がしくなってきた。いつもの調子が戻っている。
当は意を決して指示を出した。
「みんなご苦労。しばしの間、小笠原で休息できるだろう・・・ドックの中でだが。それでは第二ドックへ帰還する!」
「SМJっ!」
メンバーの明るい復唱が響いた。
MJ2は悠然と成層圏を飛ぶ。

 

『数時間にわたって放送が中断されたことについてお詫びいたします。それでは本日のトップニュース。今日午前、東京湾に忽然と現れた謎の飛行物体が湾外の別の飛行物体を攻撃。その余波で東京湾を中心に東京、神奈川、千葉での電波障害が引き起こされました』

『謎の飛行物体に撃たれた側の物体は墜落しましたがその後今度は湾内海中から正体不明の・・・これは潜水艦なのか航空機なのか不明の巨大飛行物体が浮上し、謎の飛行物体とか・・・か、格闘戦?を繰り広げました。この異常事態について政府は・・・』

『大規模な電波障害から回復した東京、千葉、神奈川の三知事はそれぞれ会見し、東京湾における事実上の戦闘行為に遺憾の意を述べながらも、《どこの誰かも不明とはいえ、未曽有の混乱に終止符を打つきっかけとなった謎の戦艦と乗組員に感謝する》との声明文を共同で表明し・・・』

Cet incident a fini par passer inaperçu dans le monde entier en raison des interférences de diffusion par satellite survenues dans divers pays.

『During the Tokyo War, most of the artificial satellites in orbit were malfunctioning. Live broadcasts were not possible across the US, even though prime time was approaching. The White House issued the following presidential statement on the matter:《It is a great pity that the only people who witnessed such a spectacle were Japanese people who were there. So I have nothing to say about this incident.Because it’s regretful.》』

 

 

※本作は勝手に書いてきたオリジナルです。同作関係者などとの関係はありません

終わりました。消化不良と下手くそな仏文英文でごめんなさい(全編下手くそですが)。
皆さまにあっては良いお年を。

マイティジャックを取り戻せ! 完結編ノ漆

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その巨大な空中戦艦は突如太平洋の彼方から飛来し、高度にして200m程度の進路で浦賀水道に侵入してきた。

リフティングボディとデルタ翼、艦中央部からせり上がった崖のような「馬の背」は後方に向けてなだらかに傾斜し、垂直に伸びた尾鰭へとつながる。
「まるでMJ号じゃないか・・・」

観音崎灯台から海上自衛隊の掃海活動を監視していた川上は通信端末で撮影したデータをマイティジャックの本部へ転送する。
川上の印象通り、漆黒に近い紫色の空中戦艦はMJ号に酷似していたが、唯一、艦首の形状が異なっており、艦首両舷にカナード状の補助翼と思しき突き出しが確認できた。
さながらシュモクザメの鼻先のような艦首はゆっくりと回頭し、艦尾を東京湾に向けて空中停止した。停止後、謎の空中戦艦は海上の掃海活動を見下ろす位置にありながら、これを攻撃するそぶりを見せずにその存在だけを主張するかのようだ。
「何者なんだ? というより、あれは間違いなくQ」
しかし川上には相手の真意がつかめなかった。
マイティジャックはもちろんのこと、これまでQも正面切って一般社会に空中戦艦の類をさらけ出しては来なかった。稀に陸の上空で戦闘状態に持ち込まれたことはあるが、高度をとった上空を飛行するMJ号のスケール感は、地上から視認されても200m級の巨大艦には見えないものだ。川上はそれらのスケールを知っているから危機感を覚える。浦賀水道上のそれは、対岸の風景も含めた実景の中ではたいした大きさには見えないが、それでも得体のしれない飛行物体が浮いているだけで、人々の耳目を引き付けるのには十分だった。

一連の報告を受けたMJ2でもブリッジは騒然となっていた。
「よもやの三番艦とか?」
マリが首をかしげるものの源田は否定した。
「プラモデルじゃねんだ。そんなにほいほい新しいのに出て来られてたまるかい」
「ということはやっぱりQの・・・」
マリが不安げな顔になる。当はつぶやき、唇をかんだ。
「そうか・・・elfter Schwarzer、つまり黒の十一番というのは、『BlackJack』の符丁だったんだ」
「ブラックジャック、ですか?」
「我々に対する挑戦だよ。Qめ、我々の不在に乗じて万能戦艦の存在を暴露する腹積もりだ」
「なぜそんなことを?」
「それはいくつかの想像を浮上させるね、隊長もそうだろう?」
英がマリの疑問に答える。
「ひとつは万能戦艦の諸国へのアピールだ。MJ号の秘匿されてきた作戦行動を逆用し、あれをさらけ出すことで水空両立した超兵器の需要を産み出そうというわけさ。同時にあいつがMJ号になり替わって、東京湾を防衛するような位置関係から我々を迎撃する狙いがあると見た」
英の推理に当も同意する。英は当の考えを尋ねた。
「地球に戻ったとしても迂闊に攻撃できない。隊長、どうします? あの場に居座られては東京湾内沿岸都市を盾にされるばかりか、本部の所在にも危険が」
「今はそっちに関しては何もできん。ウイングの作戦行動支援に集中する」
当が場の空気を引き締めた。
『こちらウイング。思ったより通信環境は良好。これより衛星頭頂部にとりつき、副長がデータを持ってウェブッドで出ます』
めぐみからの通信を確認し、MJ2はアストランダ―ウイング支援のためにQ衛星との併走を続ける。衛星側の迎撃レーザー兵器は、天田の射撃精度の敵ではなかった。天田は宇宙酔いに苛まれ三半規管も悲鳴をあげていたが、めぐみの真横で嘔吐するなど末代までの恥だと歯を食いしばった。
その足がふらつきそうになるのをこらえながら、天田は操縦室背後の隔壁のさらに後方にあるアストランダ―ウェブッドに張り付こうとしていた。
「副長、用意は如何?」
『用意ったってさ、こいつでいいのかホントに』
「ウェブッドっていうのはトーマス君の命名にすぎないわ。単に船外作業支援ユニットのことだから」
『宇宙遊泳させられるよりはいくらか安全か。そんじゃ行ってくるぜ』
めぐみはアストランダ―ウイングの機体を反転させ、衛星に向けて係留ロッドを撃ち出す。同時にウイングの背中のハッチを開放して天田が乗るアストランダ―ウェブッドを放出した。
アストランダ―ウェブッドとは、宇宙飛行士が船外作業従事の際に追加装備するマニピュレータやスラスター付きシートのことだ。天田はこれに腰掛けレバーとペダル操作で衛星に接近し、そのままとりつく。
「これのことか」
目視確認した衛星の点検ハッチはひどく単純なものだった。つまみをひねり出し90度回して再び押し込むと、ハッチは瞬時に開いた。点検用コードをつなぐソケットがあった。天田は左腕にバンドで固定してあるタブレット端末からケーブルを伸ばし、点検設備に接続して暗号コードを送信した。
その様子はMJ2でもモニターされている。
「暗号コードって、有線でないと認証できないんですね」
寺川が心配そうに天田の作業を見守りながら言った。
「なにしろ裏コマンドだからな。通信を傍受されてジャミングされては面白くないし、電磁波の状況によっては送信できない。桂君の通信は感度良好だったがね」
英が当の方にシートを回転させながら尋ねた。
「どんなコードなんです?」
「衛星の母国語による国歌斉唱音声だそうだ。それで衛星本来のAIが認証すれば、あとは対話型指示で制御可能らしい」
「へー・・・副長、あの国の言葉なんか使えるんですか」
「いや、認証後は英語での対話ができるという話だ。副長の日本語じゃあかえってケンカ腰になりかねんからちょうどいいだろう」
当の冗談を聞いてマリが噴き出した。
『おいマリちゃん、いま俺を笑っただろうっ』
「えっ、なんでわかったんですか副長!」
『そんな気がしただけ。で、笑いやがったんだなこのやろー』
「すっ、すみませーんっ」
『そんなことより隊長、コード認証されました。今から親善交流始めます。それで、今後の作業は隊長の発案通りに進めますがすぐには終わらんでしょう。ここは俺たちに任せて地球に戻ってください』
『そうですね。ウイングには滞在に十分な酸素も空気も備わってますし、何かあったら自力で再突入できる機体ですから』
天田に続いてめぐみからも具申が入った。
「今回に限っては大気圏への単独再突入は認めん。避難先に関しては国際宇宙ステーションに拾ってもらえるよう要請を出しておく。ここまでは上出来すぎなくらいうまく行っている。だが油断はするな。それから、ひとつ指示を追加するが面倒でもよろしく頼む」
当は追加指示を出し返信を終え源田と服部、トーマスに指示する。
「軌道再変更、MJ2は大気圏再突入に移る。出てきたときよりもハードルの高いシークエンスだ」
「SМJ! 80分待ってください。突入軌道へ乗せるのに最低限それだけかかります。そこから突入高度の120キロまではつるべ落としです」
「再突入時にはエンジンの負荷はゼロと見ていいでしょう。そうだよなプロフェッサー」
「yes。自由落下と滑空で済みますから。超耐熱コーティングの見せ場です」
MJ2は衛星軌道からの離脱を開始する。

大気圏再突入時のMJ2は第二宇宙速度に迫り、秒速12キロもの超音速で降下することになる。その際衝撃波の発生で大気が圧縮され突入対象物は一気に加熱される。
空力加熱によるMJ2の表面温度は1000℃を越える。この加熱に備え、艦体は特殊樹脂でコーティングされている。再突入時、コーティングが溶解して熱を奪うのである。同時にリフティングボディ効果を発揮するため、MJ2は仰角をとりデルタ翼が揚力を発生させ滑空態勢となる。
MJ2は衛星軌道から急速度で降下し、大気の層と反応する高度120キロで再突入角度を整えた。
「全エンジンアイドリング。降下角度良好、なんかもう操舵桿が重いっす!」
「姿勢制御はシステムに任せろ。空力ブレーキで速度をコントロールしながらスラストポイントを捕まえる」
空力ブレーキが引き起こす衝撃加熱がMJ2の降下運動エネルギーを前方で大気熱エネルギーに変換し、エアロキャプチャシークエンスとして一気に減速する。その加速度は打ち上げ時よりも乗員に荷重を押し付ける。
体を引っ張り上げられるような荷重に耐えながら、高度が下がれば狙い撃ちされる危険があることを当は考えていた。今は必要ないが、トーマスの説明では二系統ある反物質精製用のスーパーボルト加速器はそれぞれ、さらに二系統に組み上げられている。その片方が二門の荷電粒子砲用に使われており、主砲ではなく艦首に備えた放電システムにつなぐことで、一時的な放電障壁を展開できるという。
もちろんこのとき主砲を撃つことはできない。主砲は80mm砲弾二連装速射型と荷電粒子ビームの切り替え式だが、どちらも前面に放電バリアが張られているわずかな時間は撃ってもバリアに当たって自爆してしまう。
「MJ号の旋回性能と機動性が優先されて、主砲が前面仰角しかとれないところが欠点です」
トーマスも主砲基部にターレットを増設しようと試みたが艦載機の着艦格納誘導路をつぶしてしまうために断念していた。
作戦会議での対話を思い出しながら、当は浦賀水道に出現した敵艦の武装性能を想像する。
「どうせQの空中戦艦にMJ号もどきのガワを被せただけだろうが、もどきゆえに同じようなハードポイントと火力放射点と考えるべきか。トール・ハンマーをどこで使うかが防御の重点だな」
トール・ハンマーとは、トーマスが考案した放電障壁の呼称だ。概念を聞いた村上が、彼の趣味でまたしても「稲妻落とし」と言ったのだがトーマスに否定されている。

「お待たせでした! 再突入完了。大気の層の内側に戻ってきました。艦が重いけど揚力も十分に得られてます」
「降下態勢は?」
「もうしばらく俯角をとれません。下腹を見せつけるのは癪ですがまあ、地球をあと半周する間は敵も撃てないでしょう?」
「わかった。ゲンはそのまま艦体の安定を保て。寺川、全兵装は正面への誘導を図る。敵艦に奇襲をかけるぞ」
「しかしそれでは東京湾に被害が出ませんか?」
「まともに撃ったらそうなるな。だが俺はまともな戦法を考えていない」
「うわー・・・沈着冷静な隊長がそんなことを言うなんて」
寺川は困惑したように言うが、その顔はなんとなく笑っている。
「トーマス、敵の情報が皆目わからんが、射程距離はどれくらいだと思う?」
「I’m not an expert。でもハープーンなんて120キロは狙えるんでしょう?」
「実弾ではない。奴がMJ2のような荷電粒子砲を持っていた場合の話だ」
「That’s hard to say。MJ2にも同じことが言えるのですから。荷電粒子ビームを直進させられるだけのパワーがあるかどうかです。地球の自転速度や重力、大気層の状態とかいろいろな誤差修正の必要があります」
「それでもビームはまっすぐ飛ばないってことだよ隊長」
村上がフォローする。
「イメージするなら幾ばくかの弧を描いて、それほど高くない命中精度で来るだろうさ。せいぜい10キロが射程距離じゃなかろうか。精度を重視するならもっと引き付けないと」
「こっちも同じだということだな。それでいい。長距離戦でビームは使わん。トーマス、君のマスターには申し訳ないが、アストランダ―ロケットを囮にする」
「えーっ? あれは自力では飛べませんよ!」
トーマスが左後方の艦長席を振り返りながら何をするつもりなのかという顔をする。
「一瞬滞空していればそれでいい。空中で離艦させることはできるか?」
「A mechanism is installed to disconnect in case of emergency・・・でもいったい何を?」
「I told you it was a surprise attack!」
つい当もトーマスに併せて答えた。
「隊長、ニセMJ号の何が凄いかって、浦賀水道の空中に定位して浮いているってことでは?」
マリが素朴な疑問を投げかけた。
「さすがに反重力だなどとは言わせたくないね。おそらくとんでもない推力で降下せずにいられるのだろう。隊長、向こうのエンジンがこっちと同じとは思わないが、それなりの大出力で攻撃兵器にも力を回せるんじゃないかね」
村上は、それを攻撃して爆沈させたと仮定した場合の周辺被害を想像した。
「もっとも・・・こっちがそういう目に遭ったら核融合炉の爆発どころのレベルじゃないんだが」
「その通りだ。だからこの奇襲は文字通り一発勝負になる」
「目標まで30キロに接近。陸からの映像を拾ってます・・・ふざけた艦影だぜまったく」
源田が毒づくように、艦首こそ独特の意匠だが知らない者が目にすればMJ2の同型艦としか思えない。それが白日の下、テレビニュースに流されているのだ。
「すぐ会敵しますがこのまま行くんですか?」
「高度をゆっくりと下げろ。向こうが撃ってきたらアストランダ―ロケットをパージして本艦は墜落する」
あー。とトーマスは顔を覆った。源田は墜落ってまたそれかよと苦笑いする。
「敵艦から攻撃! 五秒で着弾しますっ」
マリの観測に応じてトーマスは仕方が無いとアストランダ―ロケットの固定ラッチに仕込んだ爆発ボルトのスイッチを入れた。
「トーマスっ、パージと同時にトール・ハンマー展開。直撃は避ける」
「SМJっ I wanted to say this!」
大気を電離させる大出力で、光の帯が衝突してきた。あのシュモクザメ型艦首からの三連もの射撃だ。ビーム兵器としての完成度はまだ低いが、約20キロもの長距離から飛来してくる荷電粒子砲だ。ゆらぎや蛇行で失われるエネルギーを計算に入れても一撃の威力は計り知れない。
トーマスは一瞬速くアストランダ―ロケットを切り離し、艦首に放電障壁を撃ち出す。障壁の展開と着弾が同時だった。
ブリッジの窓に使われている自動偏光機能が目のくらむような爆発光から乗員の目を護るが、荷電粒子と数億ボルトの放電障壁が激突する衝撃はすさまじい。その直後、弾かれた荷電粒子に巻き込まれたアストランダ―ロケットが爆発する。
「こりゃほんとに墜落だわっ」
源田が必死に態勢を立て直そうとするが、すでに艦首は大きな俯角をとって海面へと落下を始めていた。

 

※本作は勝手に書いているオリジナルです。同作関係者などとの関係はありません

次回でたぶん終わると思いますが、とりあえず掲載を一日前倒して30日に大団円へと・・・
迎えられなかったらもう年越します。

マイティジャックを取り戻せ! 完結編ノ陸

マイティジャックを取り戻せ! 完結編ノ陸 はコメントを受け付けていません

「ヒートバンパー展開完了! 既に灼熱化順調っ」
「実際に何が起こるかわからん。衝撃に備えろ」
洋上のMT号は、「MJ2」の離艦直後に防御シークエンスを発動していた。偽装コンテナパネルは対水圧のためだけに二重構造になっているわけではない。フレキシブルに角度を変えながら上空からの攻撃に対処する。そこに超高速粒子線が命中し、大気中の水蒸気を瞬時に『熱い氷』へと変質させた。
が・・・
これを受け止めたヒートバンパーは既に表面温度を450℃まで上げており、さらに温度は上昇する。『熱い氷』は実体化できずに元の水蒸気へ還元されてしまった。
「この間に潜って逃げられないのがこいつの欠点だな」
大利根七瀬は苦笑いしながら上空へ伸びるMJ2のロケット煙を眺めていた。
「八郎・・・無事に還ってこい」

急角度で高度を上げていくMJ2は、ほぼ秒速8kmという速度を維持しながら静止トランスファー軌道を目指している。この軌道からさらに静止軌道へと飛ぶのだが、トランスファー軌道に乗ってから数時間の軌道コース調整が必要だった。
静止衛星の軌道投入プログラムが、現在の日本ではその方法しかないためだ。地表から数百キロの近地点高度に対して、静止軌道にあたる赤道上空約3万6000キロに遠地点を結ぶ楕円軌道を、MJ2もトレースする。力学的な負担の軽減が従来のロケット打ち上げにおける衛星の軌道投入時の必然だが、今回はそのことも含め、Q衛星からの攻撃を回避する理屈もあった。
MJ2は基本的に「MJ号」と同様の空中戦艦として建造され、艦首に航空機のようなノーズを持ちながらその下部には艦船のようなみおしを備えたリフティングボディと、飛行時の揚力を稼ぐためのデルタ翼が大きな特徴だ。
トーマス・ナリタの提案によって主エンジンが大幅にアップデートされ、ツインノズル方式としてエンジン自体が2連装となった。
対消滅機関を成立させるために、その機械スペースを大きくとる必要があったためだ。
反物質の素材として主に窒素を利用し、加速器内でスーパーボルトを発生させ窒素の原子核と衝突する光核反応を起こす。その過程で幾度も変質する窒素同位体が、瞬時に炭素13Cやニュートリノ、陽電子を放出する。これが電子とぶつかり対消滅が誘発される。新エンジンは強力な磁場と電場で対消滅量をコントロールしながらスラストチェンバーに送り込むシステムだ。
当然のことだがこのプロセスでは有害なガンマ放射線が発生する。エンジンの稼働時にはエンジン区画は完全閉鎖され、ブロックそのものも鉛を主とする特殊金属の筐体によって封じ込めが行われる。
そのメインブロックを艦体後方の中央部に置くため、スラストブロックが左右に分割された。
トーマス・ナリタの概論によれば、要約された対消滅機関の仕組みはそのようなものだと承知せざるを得ない。マイティジャックのメンバーとしては、「爆発しなけりゃそれでいい」以上の専門的な質問をできる者が村上しかいなかったが、その村上は思慮深く、メンバーの不安をあおるような言動を慎んだ。

「作戦確認をしておこう」
7G加速から解放され、全員に異常のないことを確認しほっとした顔をしながら、当は言った。
「先の会長からの電文だが、Q衛星の爆破破壊は、衛星内に原子力電池の存在が確認されたために実行できない。万一、これが吹き飛んで大気圏内に落ちることを避けなくてはならない」
「それじゃあどうやってあれを黙らせるんですか?」
寺川が困ったという表情で尋ねる。
「観測によれば、衛星は既に大国の宇宙攻撃部隊が発射したミサイルをレーザーか何かで迎撃・爆散させ、それで生じたデブリを磁場で制御し自らの物理バリアにしているようだ。これを突破して衛星に直接とりつくしかないだろう」
「アストランダ―ウイングですか」
「そうだ。この艦よりは小回りが利くからな。それでも相対速度は秒速3キロに達する。事前にあらかたのデブリを始末してやらなくては、桂君の操縦も負担が大きい」
そこで、だ。と、当は胸ポケットから通信端末、腕のラッチからボールペンを取り出して宙に浮かせた。
「oh!」
突然、トーマスが上ずった声をあげた。
「どうしたプロフェッサー?」
「すみません。それ、『2010』でロイ・シャイダーがやったやつです。実際に見られるなんてすごいなあ」
何を言い出すんだと一同が呆れるが当は気にも留めずに続ける。
「この端末が衛星。ペンが本艦だ。相対速度を合わせつつ併走し、右舷をデブリ側に向け、改良型電磁ネット弾頭を撃ち込む。改良型は第二ドックで博士が作ってくれたが4発しかない」
村上が後を引き継ぐ。
「要は宇宙の清掃作戦だ。弾頭はデブリの手前で炸裂して放射状にネットを展開する。これでデブリを可能な限り大量にからめとって、慣性で衛星から引きはがす」
「ごみの回収はどうするんです」
「質量的には大気圏に落として燃やしてしまえばいいさ。大国が核弾頭を使っていなかったのは幸いだ」
「核、といえば、原子力電池なんて何で積んでるんですかね。けっこうでかい太陽光発電パネルを持っていたはずですが」
英が気になるところを突いてきた。当が答える。
「あの超高速粒子線の発射器に必要で、一緒に、Qが打ち上げ前の衛星に細工したのだろう。衛星の持ち主である某国も原子力電池の存在は否定しているらしい」
「細工ってレベルじゃあないな。某国の否定というのは疑ってかかるべきだが、今はどうでもいい話か」
「彼らは身の潔白の証明だという理由をつけて、奥の手を提供してくれている」
「ほう、そりゃまた疑ってかかりたくなる話ですな。何を提供してきたんですか」
「衛星の制御を取り戻すコマンドだ。だが奥の手だけに地上からの遠隔操作に対応していないという」
「ふーむ・・・結局桂くんチームの出番か」
そこへブリッジ後方のドアが開き、めぐみがふわりと浮遊しながら戻ってきた。
「隊長、打ち上げGの間は出来ませんでしたが、例のプログラムのダウンロードを完了しました。問題はどうやって衛星に、それもどこに機体を着接させるかです」
めぐみの報告を受けて当は考えを巡らせる。その間にめぐみは艦長席のコンソールに手を伸ばして慣性を相殺しながら床に足をつけた。
「そもそも有人衛星じゃないからな。図面を見た限りではほとんどの点検作業を衛星本体の外側から行う構造だ。ウイングは係留させアストランダーウェブッドで接近する段取りかな・・・副長は何をしている?」
「ウイングのコクピットをシミュレーターモードにして特訓中です」
「盛り上がってきたところ恐縮ですが」
計器板とモニターを交互に監視している源田が操舵席から報告してきた。
「ぼちぼち第2加速ポイントに到達します。軌道計算はAIがやってくれてますが、お待ちかねのエンジン点火は加速噴射も含めてここでやります」
「六さん、プロフェッサー。いよいよ新エンジンの本格発動だ。準備はいいか」
「理論的には単純な仕組みですが、反物質生成と捕獲・一時蓄蔵して磁場制御内で放出というプロセスは、地上のどの物理学研究所もやったことがありませんからね。まあ電気だけは売るほど作れて蓄電させられるんで、いざとなったら補助エンジンで電気推進でもやりますよ」
「No need to worry! 地上の試運転で反物質の生成は完璧にできました。放射線の封じ込めも筐体強度も申し分ないレベルです。ロクサン、be confident」
「ははっ。俺が作ったわけじゃないぜ」
「仕組みのことはいい。どうせ計器の数値を見てるしかないし、スロットルの塩梅はオートマ車みたいだ。二人ともうまく釜焚きしてくれよ」
源田はむしろ、姿勢制御の方が難しいと感じていた。秒速度を徐々に落としているがこれはロケット推進によるものだ。対消滅エンジンの「ひとふかし」がどれほどの加速につながるのかイメージできない。理論よりもそこを教えてほしかった。
「静止軌道に本艦を乗せます。主エンジン点火用意!」
どうにかなるさと、源田は覚悟を決めた。
「5秒前からカウント。スラストレバーは20%で!」
「2、1、点火!」
源田の腕がスラストレバーを押し出すと同時に、床下から微振動が伝わってくるような気がした。艦体後方ではトーマス理論通りに対消滅推進力が発生しているはずだ。ぐんっという急加速のGが体を襲う。
「機関正常。スラストノズルの磁場にトラブル認めず」
「目標軌道まで約90分。その後秒速3.6キロまで減速します!」

衛星投入においては、トランスファー軌道からの加速で静止軌道まで4時間程度を費やしているが、MJ2は多少の無茶を強いられ、軌道への進入を試みた。第二宇宙速度に達すると衛星軌道を離脱して宇宙へ飛び出してしまう。
MJ号の大気圏内最高速度はマッハ2・8。艦体サイズから考えてもとんでもない速度で飛んでいたのだが、秒速3キロに減速したとしてもマッハ9近くの速度となる。静止衛星軌道域に存在する衛星たちは総じてその速度で地球の自転と釣り合いを保ち、あたかも赤道上空の定位置に固定しているかのように見える。
仮に、MJ2が地球の自転に逆らい衛星軌道に達するには莫大な推力が必要であり、対消滅エンジンがこれをクリアしていても現実的ではない。ましてや迎撃する相手はそれだけの相対速度で飛んでくるのだ。衝突が回避できてすれ違いざまの一撃を、などという戦法は不可能に等しい。よって自転方向に飛びながら高度と軌道を調整し追跡コースを取らなくてはならない。そのくせ所要時間がいらつくほどかかる。
「捕捉追撃までに飯食ってられるなんてあほみたいだぜ」
源田が独り言ちしていると、アストランダ―ウイングの操縦席からも、おいまだかよと天田がぼやいてくる。
やがて進行方向にレーダー反応のあったQ衛星が光学映像でも観測された。衛星本体は10m四方のユニットを複数打ち上げ遠隔操作で組み上げたものだが、このユニットの中に、レーザー発振器として転用可能な地表観測用機器を巧妙に偽装したQの兵器が内蔵されている。
相対速度を保ちながら右舷1000mの距離まで接近したMJ2は、衛星を取り巻くデブリ群を除去するため、電磁ネット弾頭を発射した。
弾頭はデブリ群の手前で炸裂し放射状のネットを展開する。これがデブリに接触すると、プログラムされた質量に達したところで、八方に備わったマグネットバラストが互いに引き合い、ネットを球状に閉じ、慣性を維持したまま多量のデブリを持ち去るのだ。球状ネットはそのまま地球の引力に捉えられ、落下し炎上滅却される。
さすがに全てのデブリを除去することはできないが、アストランダ―ウイングの飛行航路を確保することには成功した。
「これよりMJ2を衛星後部の軸線に載せる。副長、正対あるいは追尾する目標にはレーザー攻撃があるそうだ。火線を見極めてウイング出動せよ。レーザー砲のみ撃退」
『了解、アストランダ―ウイング発進します』
「ゲン、軌道修正頼むぞ。寺川と先生は主砲で威嚇射撃」
「了解。主砲は荷電粒子発射システムに切り替える。ただ・・・」
武器管制を担当する村上はつぶやいた。
「太陽フレアから降っている電磁波の影響を受ける。たぶんビームは直進しないぞ」
「村上さん、Surprisingly okay! 拡散された方が破壊力を半減出来て、残った微小デブリを焼き払うくらいで衛星を直撃しないから」
「まあそううまく行くかどうかは、撃ってみなけりゃわからんな」
「大変です隊長!」
マリが叫んだ。
「東京湾上空に200m級の空中戦艦が出現との川上さんからの通信!」
「なんだと? Qか」
「MJ号に酷似しているそうです!」

 

※本作は勝手に書いているオリジナルです。同作関係者などとの関係はありません

 

さてだいたいの風呂敷は拡げたんですが、これをどうやって畳んだらいいんだろう?