コールドムーンとは言いえて妙な北米ネイティブの人々の言葉に心を揺り動かされる。いつまでも続きそうな夏だった今年も、いつしか秋が訪れ去っていき、12月の満月がやってくると同時に大気の冷え込みも強まってきた。
今年を締めくくる満月は、楕円軌道を描く月が近地点に位置することから、見かけの大きさが普段よりかさ増しされ、スーパームーンとも呼ばれている。
しかし凡人である自分には重力変異のかけらも感じることは無く、見かけが大きくともとてつもなく遠いところにある、それでも最も身近な天体を眺めながら夜を走る。見かけという表現を何かの言葉に置き換えれば、1台の自動車であそこまで行って、還ってきた。うだるような夏の炎天下も、凍て付く冬の夜も、ただその距離を刻むことだけ考え、走り続けたのだ。
それは叶った。
そのときから、明日からどこへ向かえばいいのかしばし困惑しながら、まだ走っている。自ら決めたゴールは目前に迫ってきたが、すると今度は、走り終えることへの虚無感が降ってくる。まったく、身勝手なものだ。そんなことだから、目標の期日までにゴールできないという体たらくに陥った。
期日を厳守するか、目的を遂げるか。
何度目かの身勝手な逡巡の末、こうして月夜の凍て付く空の下に走り出す。コールドムーンが見納めの満月となるかと思っていたが、ウルフムーンの晩にもきっと走っている。












