伯母夫婦からの蚕豆。
月曜の昼過ぎに家に戻ったら〝不在通知〟。数日前に伯母から「豆送るからねー」と電話があったっけ。配達の人に電話して「職場に持っていってもらえます?」と聞いたら『重いですよ?』って。(自宅と職場は同じ配達区域)「いいです、会社で分けちゃいますから」って言ったら笑ってたわよ。
厨房はよほどの混雑期でなければ、ササキさんが一人で切り盛りしています。だから献立はそう多くはなく、手際よく作れるものに絞られていますが、それは言っちゃあだめなのよという不文律は、当然あるわけです。そしてそれを補佐するかのような、風変わりな品書きの数々。しかし一つ、気になるところがあります。
「銀河鉄道の夜、が特性ラーメンで、それとは別に、ごくふつうのラーメンっていうのがありますよね?」
「はい、ございます」
「ところが、カレーライスは、いきなり、ごくふつうのカレーなんですけど、これって以前は、ごくふつうじゃないカレーもあったんですか?」
そうなのです。現在の献立表には「ごくふつうのカレー」があるのもで、わざわざそう書いているなら、ラーメンと同様に特製の何かがあったのではないかと、そう思っていたのです。
「ああ、それはですね・・・」
ササキさんはにこにこしながらそのことについて説明してくれました。な・・・なんと、すげー意外な事実を聞くこととなったのです。
「ええっ! ということは、それはよほどのことがないと・・・というより、その条件がそろっていないと出てこない献立ということになるんですか?」
「あ、そういうことになっちゃいますねえ」
なるほどそうだったのか! おもしろいぞ種山の食堂・・・
岩手県奥州市の種山高原にある星座の森キャンプ場には、レストハウス内にユニークな名前の献立を持つ食堂があります。昨年ここを利用したときに注文した「銀河鉄道の夜」は、特製ラーメンのことを示していますが、みそ仕立てのピリ辛のスープと中華麺に、鶉の卵とコーンとシナチクとチャーシューと海苔が載っていて650円。ピリ辛といってもそんなに辛いわけではなく、みそ仕立てといってもけっこうあっさりしていて、割と気に入っています。
この味と同じものを探してこの一年、機会を見つけてはあちこちで似たようなものを試してみたものの、全く見つけることができず、結局はここへ戻ってきたのでした。厨房は昨年いらしたササキさんが担当しており、ここへやってきた経緯をお話しすると
「あら、そんなふうに褒めていただいて、うれしいですね。さてさて、昨年と同じように作れるかしら」
と、てきぱきと銀河鉄道の夜を作ってくれます。結論から言うと、昨年よりちょっと薄味でした(笑)が、探していた味わいを得ることができました。聞いたところでは、星座の森の親会社は「江刺藤原の里」だそうで、そこの食堂にも同じものがあるかもしれないとのこと。ということはつまり、麺もスープも具も、営業用の素材を使っていると。まあそれは仕方がないですが、スープなどの加減がササキさんの手に委ねられているとなれば、これはやはり種山高原に来なければだめなのだと、大げさにアピールしてしまおう。
そのうえで、スープのことを尋ねてみると
「麻醤を加えている営業用スープです」
え? 麻醤って、練りゴマのことですか。言われてみればゴマの風味がしないでもないけれど、ゴマ油の苦手な僕が気にならずにすすれる(いい加減な味覚なんだろうっ)。実は味噌ラーメンも、好んでは食わないのです。昨年だって、名前だけにつられて内容も聞かずに注文して、出てきたものを見るなり「しまった」と思ったのが第一印象でしたから。
でも、ここの特製ラーメンは、気に入ってしまったのです。そこへきて意外な事実を聞いてしまったなあという気分。でもうまかったことは素直に認めなくちゃなりません。