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  ~懲りない傾向~

光りかがよう麗しい姫の物語

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1935年11月、11日に京都宝塚劇場で封切られ、21日から日本劇場でも公開された「かぐや姫」は、後に東宝映画の一部となる京都所在のJ.O.スタヂオによる音楽映画で、同時に特撮映画でもありました。田中喜次監督の下で特殊撮影も含む撮影担当に就いていたのが、円谷英二さんでした。題材が題材ですから当然、特撮も用いられているわけですが、90年も前の映画だけにまだ観たことがありません。なんせ僕の親父が生まれた年の上映ですもん。

円谷さんは先日、アメリカの視覚効果協会が特撮技術者として殿堂入りを認めました。「ゴジラ」や「ウルトラQ」などが円谷さんの評価軸と云われて久しいですが、アメリカ人というか、GHQを震撼させた腕前は戦時中の「ハワイ、マレー沖海戦」だったと思いますし、それよりもずっと昔の「かぐや姫」は失われていたフィルムのうちのひとつがイギリスで保管されていたくらいですから、何さ今頃殿堂入りなんてと言いたいほど世界的なクリエイターだったのです。

閑話休題

円谷さんが撮影に従事したこのスタジオでは当時、市川崑さんもアニメーターとして働いていたそうで、その縁かどうかは知りませんが市川監督作品として1987年に東宝から「竹取物語」が送り出されているのも面白い話です。こちらもなかなか派手な特撮を投入していて、物語のSF性を押し出していました。

かぐや、という名前は、星や光がまたたききらめく様を示す「かがよう」なる言葉に由来するそうで、これは竹林の中で光り輝く竹からいずる赤子の姿を目撃した竹取の翁のファーストコンタクトによるものなのでしょう。ただし翁に引き取られた赤子は「なよ竹」と呼ばれていたはずで、その後名づけ親として御室戸斎部の秋田氏が登場してきます。

いずれにしても、平安初頭に宇宙と超越した生命とを織り交ぜた空想を興す想像力は素晴らしいものがあります。この主人公をスサノオやヤマトタケルのような英傑伝とせず、女性として描いたところもセンスの高さを感じます。